医師、エンジニア、AI技術者……理系人材へのニーズは高い。わが子を理系に強くするには算数強化だけでは足りない。プロ家庭教師集団名門指導会の西村則康さんは「理科が強い子は中学入試でアドバンテージになる。理科力のある子の親は、日常生活の中で自然に動植物への興味や化学、物理などへの関心を高めるような働きかけをしている」という――。
カブトムシ
写真=iStock.com/ruiruito
※写真はイメージです

ダンゴムシ、クモの糸…、子どもの観察を邪魔しない

中学入試において、思考力が必要な算数や国語と比べて、理科は暗記科目と軽視されがちだ。

しかし、近年の理科入試の傾向を見ると、単に知識を問うだけの問題は消え、初めて見る現象の原因をその場で考えさせる問題が急増している。それも日常生活での経験が材料に使われることが多い。

こうした問題を前にしたときにアドバンテージになるのが、幼い頃からの理科への興味・関心だ。

ひとくちに理科といっても、理科で扱う内容は幅が広い。植物や動物に興味を持つ子もいれば、ものの仕組みといった物理分野や、性質の変化といった化学分野に興味を持つ子もいる。動植物に興味を持つ子は、観察が好きだ。

アリの行列や、クモの糸にかかった虫などを飽きずにずっと見ている。「なぜ、そんなことを?」と親は思うかもしれないが、答えはシンプル。見ているのが楽しくて仕方がないからだ。ところが、多くの親は「そんなのいつまでも見ていないの! 早く行くわよ!」と中断させてしまう。そうやって親から邪魔された子供たちは、次第に興味を失っていく。

わが子を理科好きにしたければ、親は我慢が必要だ。仕事をして、家のことをやって、と忙しいのはわかる。これらをスムーズに進めていくには、「待っていられない」という気持ちも理解できる。

だが、大人の都合で、子供の興味を中断させてしまうと、理科好きには育たない。幼い子供は好奇心の塊だ。見るもの、触れるもの何にでも興味を持ち、「なぜ?」と知りたがる。子供が「なぜ?」と聞いてきたら、親はできるだけその「なぜ」に付き合ってあげてほしい。

子供の観察力は侮れない。なかには親でも答えられないこともあるだろう。そんなときは親子で一緒に調べてみる。それでも分からないときは「よくそんな違いに気づけたね! 将来、虫博士になれるかもしれないね!」と大いにほめてあげよう。必ずしも正しい答えを教えてあげる必要はない。子供の興味を妨げず、肯定的に受け止めてあげれば、それでいい。